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七十二候ものがたり

2018/09/02 禾乃登(こくものすなわちみのる)

houitsu

 

道を歩いていてみよこは、うしろから呼びとめられました。
「みよこちゃん」
振り向くと、村の若い衆が立っていました。「田んぼの稲が、実りはじめているぞ」
「うそ!」
「見にいくかい?」
「うーん…」みよこは今にも走りだしたくなるのを我慢して、「おじいちゃん呼んでくる!」と、田んぼとは反対の方向、お寺に向かってぱたぱたと駆けっていきました。
そうして改めておじいちゃんを引っ張ってやってきたあぜ道、田んぼでは稲が重たそうに頭を下げ、色づきはじめています。
みよこは、おじいちゃんと手をつないだまま、しばらくじっと黙って揺れる稲穂を見渡していました。春先に水から顔を出した可愛い苗や、田植え祭りのことや、いろいろなことが頭の中に浮かんでは消えていきます。
その時、不意に強い風が吹いてきて、田んぼの稲穂たちが海の波のようにうねって揺れました。みよこは思わず顔を伏せ、おじいさんの背中のうしろに隠れました。
おじいさんは衣の裾を押さえながら、「立春から二百十日が過ぎて、稲が実るちょうどこの頃から大風が吹く時季にもなる、稲刈りの日までお百姓さんたちはまだまだ気が抜けんな」
田んぼから、さっきの若い衆がみよこに手を振ってきました。みよこも「がんばってねー」と力一杯手を振り返しました。

 

二十四節気”処暑”の末候
『禾乃登(こくものすなわちみのる)』〜 九月二日から九月七日頃

 

※ 絵 / 酒井抱一

 

※ おはなしのフルバージョンは仕立てとおはなし処Dozoでどうぞ(詳細はこちら

 

※ 2018年、『七十二候ものがたり』を始めるに当たって綴った思いはこちら

 

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