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七十二候ものがたり

2018/11/22 虹蔵不見(にじかくれてみえず)

harunobu_yuki

 

急にパラパラと雨が降りはじめました。おじいさんが道の脇の大きな木の下に入ると、雨はすぐにやみました。冷たい雲の隙間をお日さまの光が寂しく照らしています。
木の下から道に戻ったところで、おじいさんはちょうどみよこと出くわしました。
「おお、みよこ」
「おじいちゃん、見て」と、みよこは、おじいさんが顔を向けていたお日さまと反対の空を指さしました。
「あれって、もしかして、虹?」
言われるままに、おじいさんはうしろを振りかえりました。たしかに、低い空、冷たい雲に今にも消えそうなくらいに淡く、本当に微かな色の筋が浮かんでいました。
おじいさんは呟くように「今年最後の虹かもしれんなぁ」と言いました。
「最後の虹?」
「ああ、虹はお日さまの眩しい光のおかげできれいな色をわしらに見せてくれる、冬に向かってどんどんお日さまの光が弱くなっていくと、虹ももう、あんな風に寂しい寂しい色になって、やがては見えなくなる」そう言って急におじいさんは足を早めはじめました。
「どうしたの?」
「この冷たい空を見ていて思いだしたんじゃ、この辺りでは紅葉が一番盛りになるが北のほうではそろそろ雪が舞いはじめる、少し降るだけでまだ積もりはしないから、小さい雪の小雪、またその便りが届いてるかもしれん」
「いつかの北のほうのお友だち? たまにはおじいちゃんからお手紙出したらいいのに」
自分の筆不精を見事にみよこに言い当てられ、「そうじゃなぁ、そのとおりじゃなぁ」と、おじいさんはつるつるの自分の坊主頭を自分で撫でながら、返す言葉もなく笑いました。

 

二十四節気”小雪”の初候
『虹蔵不見(にじかくれてみえず)』〜 十一月二十二日から十一月二十六日頃

 

※ 絵 / 鈴木春信

 

※ おはなしのフルバージョンは仕立てとおはなし処Dozoでどうぞ(詳細はこちら

 

※ 2018年、『七十二候ものがたり』を始めるに当たって綴った思いはこちら

 

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