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七十二候ものがたり

2018/12/17 鱖魚群(さけのうおむらがる)

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おじいさんとみよこは、久しぶりにお寺の裏をのぼった沢に来ていました。
ここのところ、空とか木とか周りのいろいろなものがどんどん冬に向かっていて、きっと川の水にも冬が来てるはずだと、みよこがおじいさんを連れだしたのでした。
沢に着くと、川に覆いかぶさる木はすっかり葉を落としていましたが、水が凍ったりはしていませんでした。
どこか高い遠くから時おり鳥の声が聞こえてくるほか、生き物の気配もほとんどなく、川の流れる音だけが冷たく響いていました。
しばらくの間、おじいさんもみよこも何も言わずにじっとその流れを見つめていました。
「今度みよこに鮭を見せてやりたいのぉ」
「サケ?」
「この川には来ないがな、北のほうの川に行けば、そろそろ鮭が川をのぼってくる頃じゃ」
「川をのぼるって、どういうこと?」
「鮭はな、川で生まれてから海に出て、大きくなるとまた海から川に帰ってくる、流れに逆らってどんどんどんどん上流にのぼっていくんじゃ」
みよこは不思議そうに首をかしげました。
「そこで卵を産むんじゃよ、産み終えると力尽きて一生を終える」
「ええ、死んじゃうんだぁ」
おじいさんはみよこの頭を優しく撫でながら、「またその卵から子どもが生まれる、なぁ、今度一緒に見にいこう、きっとみよこなら、あれを見たらいろいろなことを感じるはずじゃよ」

 

二十四節気”大雪”の末候
『鱖魚群(さけのうおむらがる)』〜 十二月十七日から十二月二十一日頃

 

※ 絵 / 歌川国芳

 

※ おはなしのフルバージョンは仕立てとおはなし処Dozoでどうぞ(詳細はこちら

 

※ 2018年、『七十二候ものがたり』を始めるに当たって綴った思いはこちら

 

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