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七十二候ものがたり

2018/12/28 麋角解(おおしかのつのおつる)

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麋角解(おおしかのつのおつる)

 

みよこは、道の脇をなだらかにのぼっていく林のほうを見上げて、「お父さんがさ、昨日ここで鹿を見たんだって」
「鹿?」そう言っておじいさんも林に目をやりました。「この時季に珍しいな、群れからはぐれたかな」
「いいなぁ、みよこも見たいなぁ」
おじいさんは笑って、「秋だったらな、鹿の恋の季節でもあるし、たくさん見られるんだが、こう寒くなると鹿が食べる葉っぱもないしなぁ」
「ふぅん…」
つまらなそうに口を尖らせるみよこにおじいさんは、「そう言えばみよこ、じいちゃんも聞いた話なんじゃが、お隣の中国にな、伝説の鹿が住んでいるそうじゃ」
「…伝説の、鹿?」
「大きな角を持った大きな鹿じゃ、この辺りの鹿と違って秋が過ぎて寒い寒い冬が来ても、立派な角で風を切るように広い草原を走っていく」
おじいさんの言葉を聞きながら、みよこの目がだんだんだんだん遠くへ飛んでいきました。
見たことのない国の見たことのない草原、そして、見たことがないくらいに大きな角を持った大きな鹿…
「鹿が、見えたか?」と、おじいさんが優しく聞きました。
我にかえったようにみよこは、「うん、見えた」と答えました。
「その伝説の鹿の大きな角は、冬至を過ぎたちょうど今頃、新しく生え変わるんだそうじゃよ」と言いながらおじいさんは、みよこが、目の前にないものを見る、それをいつまでも忘れないでほしいと願うのでした。

 

二十四節気”冬至”の次候
『麋角解(おおしかのつのおつる)』〜 十二月二十七日から十二月三十一日頃

 

※ 絵 : 春日鹿曼荼羅

 

※ おはなしのフルバージョンは仕立てとおはなし処Dozoでどうぞ(詳細はこちら

 

※ 2018年、『七十二候ものがたり』を始めるに当たって綴った思いはこちら

 

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