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七十二候ものがたり

2019/01/01 雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)

yuki

 

雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)

 

お寺の庭が、一面真っ白に覆われていました。
空は雲ひとつなく晴れわたっていて、凛と浮かんだお日さまが、積もった雪をキラキラと光らせています。
この雪に興奮したみよこがきっとそのうちやってくるだろうと思いながら、おじいさんは、座敷の畳の上に紙を並べていました。
ちょうど一年前の小寒、「芹乃栄」から始めて、みよこと一緒に続けてきた季節の区切り探しの紙。
「…よっぽどよく周りを見てな、近くだけじゃなくて遠く、遠くだけじゃなくて近く、見るだけじゃなくて、匂いとか、音とか、少しだけでも、昨日と今日と違うこと、一昨日まではなかったこと、何でもいいから、見つけたらおじいちゃんに知らせておくれ…」
始めるときにみよこに言った言葉です。
一年間の季節の区切り探し、みよこは楽しかっただろうか? ずっと一緒にやってきてみよこのなかに何が残っただろうか…
ぜんぶで合わせて七十一枚の紙を並べおわっても、みよこはやってきませんでした。
きっと家の近くの畑で、友だちみんなと雪の上を走りまわっているのかもしれません。
「そう言えば」とおじいさんは思いました。「あそこの畑の麦が、雪の下でそろそろ芽ぶく頃じゃ」
寒さのなかで可愛らしい芽を出して、雪が降っても元気に伸びていく麦の姿を思い浮かべながら一人笑みを漏らし、「まるで、みよこのようじゃ」
おじいさんは、七十二枚目の紙を畳の上に広げました。

 

二十四節気”冬至”の末候
『雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)』〜 一月一日から一月五日頃

 

※ 絵 / 歌川豊国

 

※ おはなしのフルバージョンは仕立てとおはなし処Dozoでどうぞ(詳細はこちら

 

※ 2018年、『七十二候ものがたり』を始めるに当たって綴った思いはこちら

 

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